脊髄小脳変性症で障害年金を申請するためのガイド

脊髄小脳変性症とは

脊髄小脳変性症で障害年金を申請するための具体的なポイントやガイドについてご説明する前に、まずは脊髄小脳変性症 の症状について確認していきましょう。

歩行のふらつき、手の震え、ろれつの回りにくさが主な症状

脊髄小脳変性症とは、小脳や脊髄などの神経系に障害が生じ、身体を思いどおりに動かしにくくなる病気の総称です。代表的な症状として、歩行時のふらつき、転倒しやすさ、手の震え、細かい作業のしにくさ、ろれつが回らない、飲み込みにくい、疲れやすいなどがみられます。

この病気の特徴は、筋力が完全になくなるというよりも、「力はあるのに、うまく動かせない」「バランスが取れない」「動作がぎこちなくなる」という点にあります。医学的には運動失調症状と呼ばれ、日常生活や就労に大きな支障が出ることがあります。

進行性の病気であることが障害年金申請の重要ポイント

脊髄小脳変性症は、症状が徐々に進行することが多い病気です。最初は「少しふらつく」「階段が怖い」「字が書きにくい」といった軽い症状であっても、時間の経過とともに杖、歩行器、車いすが必要になる場合があります。

障害年金の申請では、病名だけで等級が決まるわけではありません。重要なのは、現在どの程度、日常生活や仕事に制限が出ているかです。そのため、診断名に加えて、歩行能力、手指の動作、転倒の頻度、外出の可否、家族の介助、就労上の配慮などを具体的に整理することが大切です。

脊髄小脳変性症は障害年金の対象になるのか

障害年金の対象になる可能性は十分にあります

脊髄小脳変性症は、症状の程度によって障害年金の対象となる可能性があります。特に、歩行障害、平衡機能障害、上肢・下肢の運動障害、構音障害、嚥下障害などがあり、日常生活や労働に明らかな制限がある場合には、障害年金の検討対象になります。

障害年金では、国民年金加入中の初診であれば障害基礎年金、厚生年金加入中の初診であれば障害厚生年金を検討します。障害基礎年金は原則として1級または2級が対象で、障害厚生年金は1級・2級・3級が対象です。したがって、初診日に厚生年金に加入していた方は、3級相当の状態でも受給の可能性があります。

「難病指定」と「障害年金」は別制度

脊髄小脳変性症は指定難病に該当する場合がありますが、指定難病の医療費助成を受けていることと、障害年金を受給できることは同じではありません。難病医療費助成は医療費負担を軽減する制度であり、障害年金は生活保障のための所得保障制度です。

そのため、難病受給者証があるから自動的に障害年金が認定されるわけではありません。一方で、難病受給者証がない場合でも、障害状態が年金の基準に該当すれば障害年金を受けられる可能性があります。

障害年金申請で確認すべき3つの要件

1.初診日を確認する

障害年金で最も重要な確認事項の一つが初診日です。初診日とは、障害の原因となった病気について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。

脊髄小脳変性症では、最初から病名が確定しているとは限りません。最初は「めまい」「ふらつき」「歩行障害」「手の震え」「ろれつが回らない」などの症状で、内科、耳鼻科、整形外科、脳神経内科、脳神経外科などを受診していることがあります。

障害年金では、病名が確定した日ではなく、原因となる症状で初めて医療機関を受診した日が初診日になる可能性があります。そのため、最初にどの病院に行ったのか、どのような症状で受診したのか、紹介状や検査結果が残っているかを確認する必要があります。

2.保険料納付要件を確認する

原則として、初診日の前日において、一定の保険料納付要件を満たしている必要があります。具体的には、初診日のある月の前々月までの被保険者期間について、保険料納付済期間と免除期間を合わせて3分の2以上あることが基本です。

また、一定の場合には、初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納がなければ納付要件を満たす特例があります。なお、20歳前に初診日がある場合は、保険料納付要件は問われません。

脊髄小脳変性症では、症状が軽い時期から長期間経過していることも多いため、初診日の特定と納付要件の確認は慎重に行う必要があります。

3.障害認定日の状態を確認する

障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。障害認定日に障害等級に該当していれば、障害認定日請求を検討できます。障害認定日時点では軽かったものの、その後症状が悪化した場合は、事後重症請求を検討します。

脊髄小脳変性症は進行性の病気であるため、初診から1年6か月時点では軽症でも、その後に歩行困難、転倒、手指の不自由、構音障害、嚥下障害などが進むことがあります。その場合、現在の状態で事後重症請求を行うことが現実的な選択肢になります。

認定で見られやすい障害の内容

平衡機能の障害

脊髄小脳変性症では、ふらつきや転倒などの平衡機能障害が大きな問題になります。障害認定基準では、平衡機能障害について、脳性のものも対象に含まれるとされています。

認定上は、閉眼で起立・立位保持ができるか、開眼で直線を歩行中に10メートル以内に転倒、または著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ない程度か、といった点が重要になります。また、中等度の平衡機能の障害(閉眼で起立・立位保持が不安定で、開眼で直線を10メートル歩いたとき、多少転倒しそうになったりよろめいたりするがどうにか歩き通す程度)の場合、労働能力が明らかに半減しているものは3級の可能性があります。

単に「ふらつく」と書くだけではなく、「屋外歩行には杖が必要」「人混みでは転倒の危険がある」「階段では手すりが不可欠」「一人での外出が難しい」など、生活場面に即して説明することが重要です。

肢体の機能障害

脊髄小脳変性症では、下肢だけでなく上肢にも症状が出ることがあります。手の震えや失調により、箸が使いにくい、字が書けない、ボタンを留められない、スマートフォン操作が困難、調理中に包丁を安全に使えない、といった支障が生じる場合があります。

障害認定基準では、肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定するとされています。したがって、筋力検査だけでは障害の重さが伝わりにくい場合があります。

また、日常生活における動作と身体機能との関連(例)として、手指では「つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)」「握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)」「タオルを絞る(水をきれる程度)」「ひもを結ぶ」、上肢では「さじで食事をする」「顔を洗う(顔に手のひらをつける)」「用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる/尻のところに手をやる)」「上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ/ワイシャツを着てボタンをとめる)」、下肢では「片足で立つ」「歩く(屋内/屋外)」「立ち上がる」「階段を上る/下りる」といった項目が示されています。申立書や診断書では、これらの動作が「一人で全くできない」「一人でできるが非常に不自由」「一人でできてもやや不自由」など、どの程度の支障として現れているかを具体的に整理すると伝わりやすくなります。

脊髄小脳変性症では、「筋力はあるが、動作が不正確で時間がかかる」「震えで作業が続かない」「疲労で長時間の動作ができない」という点を具体的に伝えることが大切です。

言語・嚥下の障害

ろれつが回らない、言葉が聞き取りにくい、会話に時間がかかる、電話応対ができないといった構音障害も、就労や日常生活に影響します。また、飲み込みにくさ、むせ込み、誤嚥の危険がある場合には、食事内容や見守りの必要性も重要です。

診断書や申立書では、単に「話しにくい」「むせる」と書くのではなく、仕事で電話対応ができない、家族が聞き返すことが多い、食事に時間がかかる、水分でむせる、外食が難しいなど、具体的な場面を記載することが有効です。

等級の目安

1級の目安

1級は、日常生活の多くに常時援助が必要な状態が目安です。自力歩行が困難で車いす中心、移乗や入浴、排泄、食事などに介助が必要で、一人で安全に生活することが難しい場合などが考えられます。

2級の目安

2級は、日常生活に著しい制限があり、家庭内での生活にも相当な援助が必要な状態が目安です。屋外歩行が困難、杖や歩行器が必要、転倒が多い、家事の多くができない、外出には付き添いが必要、就労が困難または著しい配慮が必要な場合などが考えられます。

3級の目安

3級は、厚生年金加入中に初診日がある方が対象です。日常生活は一定程度できても、労働に明らかな制限がある場合に検討されます。たとえば、歩行や立位作業が困難、手指の震えで正確な作業ができない、電話や接客が難しい、通勤に危険がある、短時間勤務や軽作業への変更が必要、といった場合です。

診断書で重要なポイント

診断書は症状に合った様式を選ぶ

脊髄小脳変性症では、多くの場合、肢体の障害用診断書を中心に検討します。ただし、症状によっては平衡機能、音声・言語機能、嚥下機能、神経系統の障害などの観点も重要になります。どの様式を使うべきかは、主な障害がどこに現れているかによって判断します。

医師に伝えるべき生活上の支障

診断書作成を依頼する際には、診察室での短時間の様子だけでは分かりにくい生活上の支障を、事前に整理して医師へ伝えることが大切です。

具体的には、転倒回数、歩行距離、杖や歩行器の使用状況、階段昇降の可否、入浴時の危険、調理や掃除の困難、手書きや箸の使用状況、会話や電話の困難、むせ込み、疲労による休息時間、家族の見守りや介助内容などをまとめます。

病歴・就労状況等申立書の書き方

症状の進行を時系列で書く

脊髄小脳変性症では、症状が少しずつ進行するため、申立書では時系列の整理が重要です。最初に気づいた症状、初診、検査、診断確定、治療経過、仕事への影響、日常生活の変化、補助具の使用開始、退職や勤務変更などを順番に記載します。

「できる・できない」ではなく「安全に継続できるか」を書く

障害年金の申請では、「少しならできる」と「安全に、継続して、通常の速度でできる」は違います。たとえば、短距離なら歩けるが転倒リスクが高い、料理はできるが包丁や火の使用が危険、字は書けるが震えで読みにくい、通勤はできるが駅や階段で危険がある、というように具体化します。

申請前に準備したい資料

医療関係の資料

受診状況等証明書、診断書、検査結果、紹介状、診療情報提供書、リハビリ記録、身体障害者手帳や難病受給者証がある場合はその写しを確認します。初診の医療機関が廃院している場合やカルテが残っていない場合は、次に受診した医療機関の記録、紹介状、薬の記録、健康診断記録などを探します。

生活・就労関係の資料

家族の介助内容、転倒記録、通勤困難の記録、職場での配慮、勤務時間の短縮、配置転換、退職理由、介護サービス利用状況なども重要です。特に3級を検討する場合は、労働能力がどの程度制限されているかを具体的に示すことが大切です。

よくある不支給・低い等級になる原因

診断書に日常生活の困難が反映されていない

診断書に「歩行可」「筋力低下なし」などと簡単に記載されているだけでは、実際の生活上の危険や支援の必要性が十分に伝わらないことがあります。脊髄小脳変性症では、筋力よりもバランス、巧緻性、動作の正確性、疲労、転倒リスクが問題になるため、診断書と申立書で補い合うことが重要です。

初診日が整理できていない

ふらつきやめまいで複数の医療機関を受診している場合、初診日の整理が不十分だと審査が難航することがあります。病名が確定した病院だけでなく、最初に症状を訴えた医療機関を確認することが必要です。

まとめ

脊髄小脳変性症で障害年金を申請する場合、重要なのは病名ではなく、日常生活や就労にどの程度の制限があるかを具体的に示すことです。歩行のふらつき、転倒、手指の震え、言語障害、嚥下障害、疲労、家族の支援、職場での配慮などを丁寧に整理することで、実態に即した申請につながります。

脊髄小脳変性症は進行性の病気であり、早い段階で初診日、保険料納付要件、障害認定日、現在の障害状態を確認することが大切です。申請に不安がある場合は、診断書を依頼する前に、障害年金に詳しい専門家へ相談することをおすすめします。

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