そしゃく・嚥下機能の障害年金申請診断書を確認するチェックポイント

様式第120号の2対応 実務確認用

この資料は、そしゃく・嚥下機能の障害で障害年金を請求する際に、診断書の記載内容が障害認定基準と対応しているかを確認するための実務用チェック資料です。結論として、診断名や検査結果だけでは足りません。摂取できる食物の内容、経口摂取の可否、栄養補給の方法、栄養状態、誤嚥の危険、食事に要する時間などが具体的に記載され、相互に矛盾していないことが重要です。

本資料は、日本年金機構の国民年金・厚生年金保険障害認定基準第3第1章第5節と、聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用診断書および記載要領を基礎に整理しています。最終的な等級は、個別の傷病、経過、治療状況、栄養状態等を含む総合判断となります。

1 確認の前提

1 1 使用する診断書と現症日

原則として、様式第120号の2を使用します。表面右上の障害種別に、そしゃく・嚥下機能の障害が含まれていることを確認します。障害認定日請求では障害認定日頃の状態、事後重症請求では請求時の現症を示す必要があるため、診断書の現症日が請求方法に合っているかを最初に確認します。作成日だけでなく、10欄の「障害の状態」の現症年月日も見落とせません。

1 2 傷病名と障害部位

1欄の傷病名は、障害年金の支給を求める原因傷病と一致しているかを確認します。そしゃく・嚥下障害は、歯、顎関節、舌、口唇、口蓋、頰、そしゃく筋、咽頭、喉頭、食道等の器質的または機能的障害により生じます。脳血管障害、神経筋疾患、頭頸部腫瘍、外傷、手術後などが原因の場合は、原因傷病と現在の機能障害との関係が、4欄、8欄、9欄から読み取れるようにします。単に「嚥下障害」と記すだけでは、原因、経過、治療内容が不明確になりやすいため注意が必要です。

1 3 初診日と経過

2欄の傷病発生日、3欄の初診日、4欄の原因または誘因、8欄の初診時所見、9欄の治療経過を突き合わせます。初診日は、現在の医療機関の初診日ではなく、原則として原因傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。受診状況等証明書や病歴・就労状況等申立書と年月日や経過が食い違っていないかも確認します。

2 障害認定基準と診断書の対応

区分

障害の状態

診断書で確認する中心事項

2級

そしゃくの機能を欠くもの

流動食以外を摂取できない、経口摂取ができない、または経口摂取が極めて困難な状態。食物が口からこぼれるため常時手や器物で防ぐ必要がある場合や、一日の大半を食事に費やす程度も含む。

3級

そしゃくの機能に相当程度の障害を残すもの

経口摂取のみでは十分な栄養を確保できずゾンデ栄養の併用が必要、または全粥・軟菜以外を摂取できない程度。障害厚生年金の区分。

障害手当金

そしゃくの機能に障害を残すもの

ある程度の常食は摂取できるが、そしゃく・嚥下が十分でなく食事が制限される程度。厚生年金保険の一時金の区分。

2 1 食物内容と摂取方法が等級判断の軸

認定基準は、摂取できる食物の内容と摂取方法によって障害の程度を区分しています。そのため、診断書の食事内容欄に丸が付いているだけでなく、どの食品なら摂取できるか、どの程度の刻みやとろみが必要か、経管栄養をどのように併用しているかを、機能障害欄や治療経過欄で具体化できているかを確認します。

2 2 形態機能と栄養状態を含む総合判断

食事形態だけで機械的に等級が決まるわけではありません。障害認定基準は、関係する器官や臓器の形態・機能、栄養状態等も十分考慮するとしています。体重減少、低栄養、脱水、誤嚥性肺炎、窒息歴、食事中のむせなどがある場合は、診断書の各欄に分散した情報が一つの状態像として結び付いているかを見ます。

2 3 そしゃく障害と嚥下障害は併合しない

そしゃく機能の障害と嚥下機能の障害は併合認定されません。両方に障害があっても、別々の障害として点数を加える考え方ではありません。ただし、双方の障害が摂取できる食物、摂取方法、栄養状態、誤嚥の危険にどのような影響を与えているかは、総合的な状態を説明する重要な事実です。

3 10欄4の重点確認

3 1 ア欄の機能障害

機能障害欄は自由記載です。障害部位と機能低下を具体的に記載できているかを確認します。例として、咬合不能、開口制限、舌の運動障害、口唇閉鎖不全、食塊形成不良、咽頭残留、喉頭侵入、誤嚥、食道狭窄などがあります。単に「そしゃく困難」「嚥下困難」とするより、どの段階に問題があり、その結果として何を摂取できないのかが分かる記載が有効です。手術による欠損や変形がある場合は、術式、切除範囲、再建の有無も治療歴と対応させます。

3 2 イ欄の栄養状態

栄養状態の「良・中・不良」の選択と、身長・体重の記載を確認します。現在体重だけでなく、発症前体重、直近6か月から1年の増減、BMI、経口摂取量、水分摂取量、補助栄養の有無を治療経過または備考で補うと、評価の根拠が明確になります。血清アルブミン等の検査値は参考資料になりますが、数値だけで判断されるものではありません。浮腫、脱水、筋肉量低下など臨床所見との対応も確認します。

3 3 ウ欄の食事内容

ウ欄は、1から8までの選択肢のうち、現症に最も合う項目が選ばれているかを確認します。特に次の境界を丁寧に見ます。

項目2は、ある程度の常食を摂取できるものの、十分にそしゃく・嚥下できず、食品の種類や硬さ等が制限される状態です。

項目3は、全粥または軟菜以外を摂取できない状態です。主食だけでなく副食の形態も確認します。

項目4は、経口摂取だけでは十分な栄養を確保できず、ゾンデ栄養の併用が必要な状態です。併用量、回数、経管栄養の種類を補足します。

項目5は、流動食以外を摂取できない状態です。とろみの程度や、ペースト食・ミキサー食との区別を曖昧にしないようにします。

項目6は、経口摂取が極めて困難な状態です。口からのこぼれを常時防ぐ必要、一日の大半を食事に費やすなど、認定基準が示す程度に該当する事情を具体化します。

項目7は、経口的に食物を摂取できない状態です。胃瘻、経鼻経管栄養、中心静脈栄養等の実施状況と、経口摂取を禁止または中止している理由を記載します。

食形態の呼称は医療機関や施設で異なるため、「嚥下食3」「ソフト食」などの名称だけで終わらせず、硬さ、まとまり、刻み、とろみ、必要な調理方法を説明します。少量の楽しみ程度の経口摂取があっても、必要栄養量をどの経路で確保しているかを分けて記載することが重要です。

3 4 食事場面を数量で示す

食事の困難さは、できるだけ回数や時間で示します。1食に要する時間、1日の食事回数、途中休憩の回数、食べ残しの割合、むせや咳込みの頻度、吸引の回数、介助者が見守る時間、誤嚥性肺炎の発症・入院回数などを確認します。「時間がかかる」「むせることがある」という抽象的な記載より、認定基準との対応を判断しやすくなります。

4 検査所見と治療内容

4 1 客観的検査を臨床所見と結び付ける

嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査、反復唾液嚥下テスト、改訂水飲みテスト等が実施されている場合は、検査日と主要所見を9欄または備考欄に記載できているかを確認します。誤嚥、喉頭侵入、咽頭残留、嚥下反射の遅延、姿勢やとろみによる改善など、日常の食事制限に結び付く所見が重要です。これらの検査名は障害認定基準が必須検査として列挙しているものではないため、未実施であることだけを理由に結論を出さず、診察所見、食事実態、栄養状態と合わせて確認します。

4 2 治療と代償方法

嚥下訓練、食形態調整、とろみ付け、姿勢調整、複数回嚥下、交互嚥下、義歯・補綴、口腔ケア、吸引、胃瘻造設等の実施内容を確認します。治療を行っても残る障害の程度が審査対象です。歯の障害による場合は、補綴等の治療を行った結果により認定されるため、義歯の適合状況、装着可能時間、補綴後も残る制限を明確にします。

4 3 誤嚥の危険

認定基準は、食物摂取が困難な状態に加えて、誤嚥の危険が大きい状態も対象としています。むせが少ない場合でも、不顕性誤嚥が疑われることがあります。医師が把握している誤嚥性肺炎、発熱、痰の増加、酸素化低下、食後の湿性嗄声、吸引の必要性などを確認し、検査所見と日常の管理状況が一致するようにします。

5 診断書全体で補う項目

5 1 9欄の治療経過

9欄には、発症・手術・リハビリ・食形態変更・経管栄養導入・肺炎等の経過を時系列で記載します。現症日前1年間の診療回数も記載対象です。状態が悪化した時期と、診断書の食事内容や栄養状態がつながっているかを確認します。手術歴がある場合は、手術名と年月日も漏らさないようにします。

5 2 11欄の日常生活能力と労働能力

この欄は必須です。食事の準備に特別な加工が必要、単独では窒息や誤嚥の危険がある、介助や見守りが必要、食後に疲労して休む、外食が困難、食事時間が長く勤務時間を確保できないなど、生活と就労への影響を記載します。職種、勤務時間、休憩、食事場所、周囲の配慮、欠勤や休職の状況を踏まえ、医学的にみた能力を記載できているかを確認します。

5 3 12欄の予後と13欄の備考

予後欄には、改善見込み、固定性、進行性、再発可能性、今後必要な訓練や栄養管理を記載します。備考欄は、10欄に収まらない食事時間、介助、経管栄養量、検査所見、合併症等を補うために活用します。欄が不足する場合は、医療機関名、医師名、対象者を明示した別紙の使用も検討します。

6 他の提出書類との整合性

6 1 病歴・就労状況等申立書

申立書には、医学的評価を推測で書くのではなく、本人や家族が実際に経験している食事場面を記載します。食べられる具体的食品、避けている食品、調理方法、食事時間、むせ、こぼれ、介助、見守り、肺炎歴、外食・就労への影響を診断書と同じ時点で整理します。診断書が「全粥・軟菜のみ」であるのに、申立書が「普通食を摂取」となっているような矛盾は事前に確認します。

6 2 資料を付ける場合の整理

検査結果、栄養指導記録、嚥下評価票、リハビリ計画書、退院時サマリー、経管栄養の管理記録等は、診断書の記載を裏付ける範囲で添付を検討します。資料を多く付けること自体が目的ではありません。どの資料が、食物内容、摂取方法、栄養状態、誤嚥リスクのどの事実を補うのかを明確にします。

7 よくある記載不足

傷病名のみで、そしゃく・嚥下障害が生じた部位や機序が分からない。

食事内容の番号には丸があるが、実際の食品、硬さ、刻み、とろみが書かれていない。

経管栄養を使用しているが、経口摂取との割合、量、回数、導入理由が不明である。

栄養状態が「良」とされている一方、体重減少や補助栄養の記載があり、説明がない。

誤嚥性肺炎や窒息の既往が治療経過に記載されず、危険性が伝わらない。

1食の所要時間や一日の大半を食事に費やす事情が、具体的に記載されていない。

義歯・補綴後の状態が不明で、治療後に残る機能障害を判断できない。

診断書、受診状況等証明書、申立書で初診日、手術日、食形態の変化が一致していない。

8 提出前の最終チェックリスト

□ 様式第120号の2が使用され、本人情報、傷病名、現症日、作成日、医療機関情報に漏れがない。

□ 初診日、傷病発生日、手術日、治療経過が他の提出書類と整合している。

□ 機能障害欄に、障害部位、具体的な機能低下、食物摂取への影響が記載されている。

□ 栄養状態の選択と身長・体重が記載され、体重推移や補助栄養との矛盾がない。

□ 食事内容の選択が、実際の食形態と認定基準の区分に合っている。

□ 経口摂取と経管栄養の量・回数・割合、経口摂取が困難な理由が分かる。

□ 誤嚥、肺炎、窒息、むせ、吸引、見守りの必要性が具体的に記載されている。

□ 1食の時間、一日の食事時間、介助内容など、重症度を示す事実が数量化されている。

□ 検査結果がある場合、主要所見が日常の食事制限と結び付けて記載されている。

□ 日常生活能力・労働能力、予後、備考の各欄が記載されている。

□ そしゃく障害と嚥下障害を単純に併合せず、全体像として整理している。

□ 申立書や添付資料が診断書を補い、相互に矛盾していない。

参考資料

1 日本年金機構 国民年金・厚生年金保険障害認定基準 第3第1章第5節 そしゃく・嚥下機能の障害(令和4年4月1日改正版)

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html

2 日本年金機構 聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用の診断書を提出するとき(様式第120号の2、記入上の注意、記載要領)

https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-17.html

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