通常就労・日常生活能力が軽く評価され不支給となった後、再請求で障害厚生年金2級を受給できた事例

ご相談者の概要

  • 性別:女性
  • 年齢:59歳
  • 年金制度:厚生年金
  • 傷病:精神疾患
  • 請求方法:事後重症請求
  • 決定:障害厚生年金2級
  • 第1回請求:令和7年7月・不支給
  • 再請求:令和8年4月
  • 再請求時の状況:体調悪化により退職。夫から日常生活全般について継続的な支援を受けている状態

相談時の状況

令和7年7月、最初の障害年金請求は「不支給」に 通常就労を続けていたことが大きなポイントに

ご相談者は、精神疾患による症状を抱えながらも仕事を継続していました。

令和7年7月に障害厚生年金を請求しましたが、結果は不支給でした。

当時の診断書では「日常生活能力の判定」が全体として比較的軽く、概ね1.5~2.0程度の評価でした。また、ほぼ通常の形で就労していたこともあり、精神障害によって日常生活や労働にどの程度の制限が生じているのかが、十分に重い状態として評価されませんでした。

精神障害の等級判定ガイドラインでは、「日常生活能力の判定」の平均と「日常生活能力の程度」を組み合わせた等級の目安が示されています。判定平均が1.5以上2.0未満の場合には、診断書の「程度」によって3級または3級非該当が目安となる範囲があります。ただし、この数値だけで等級が決まるのではなく、診断書その他の資料から総合的に判断されます。

今回の最初の請求では、**「通常就労ができている」「日常生活能力の評価が比較的軽い」**という二つの要素が重なり、障害厚生年金3級にも該当しないとの判断になったものと考えられました。

その後、体調が悪化し退職へ「働けていた状態」から生活そのものに支援が必要な状態へ

最初の不支給決定後も症状は続きました。

やがて身体面を含む体調不良も強くなり、仕事を続けることが困難となって退職しました。

ここで重要だったのは、単に「仕事を辞めた」という事実だけではありません。

ご本人の実際の生活を詳しく確認すると、家庭内では夫が食事、洗濯、通院、外出などを支えており、夫の支援があるから何とか現在の生活が維持されている状態であることが明確になってきました。

日本年金機構の障害認定基準でも、精神障害については、原因、症状、治療、病状の経過だけではなく、具体的な日常生活状況などを含めて総合的に認定することとされています。2級は、日常生活が著しい制限を受ける、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度が基本となります。

そこで令和8年4月、現在の生活実態を改めて整理し、事後重症として再請求することになりました。

再請求では「夫の全面的な支援」を具体的に整理 食事は夫が準備し、本人だけでは安定した食生活を維持できない

日常生活について詳しく聞き取ると、著しい意欲低下があり、本人が栄養を考えて食材を購入し、調理、盛り付け、後片付けまで行うことは困難でした。

夕食は夫が調理し、片付けも夫が行っていました。昼食についても、前日の残り物やカップ麺で済ませたり、体調が悪いと食事そのものを取らなかったりすることがありました。

さらに、横になっている時間が長く、食事時間に合わせて起きることができないため、食事時間も不規則になっていました。

「食事ができるか」という評価では、単に食べ物を口に運べるかではなく、支援がない状態で、栄養を考えた食生活を規則的に維持できるかという視点が重要です。

清潔保持や家事も夫の支援が不可欠

発病前は身なりを整えることができていましたが、症状が悪化してからは身だしなみに無頓着となり、自宅では一日中パジャマで過ごすことも多くなりました。

入浴も気分が進まず、洗濯は夫が担当していました。

部屋の整理整頓や清掃をする意欲も出ず、寝床を片付けることができない状態も確認されました。

一見すると自宅で生活できているように見えても、その背景に家族の支援がある場合、「本人が一人で生活できている」と評価してしまわないことが重要です。

買い物・通院・対人関係にも大きな制限

抑うつ状態が強いため、必要な買い物に出掛けること自体が困難でした。また、通院の際には夫が付き添ったり、自動車を運転したりして支援していました。体調や気分の波が激しく、定期受診が難しいこともありました。

対人関係についても、ほとんど他人と関わらず、電話にも出ない状態でした。家族や信頼できる医師など、関われる相手は非常に限定されていました。

電話、メール、宅配便の受取りなど、通常の社会生活で必要となる他者との接触さえ遮断してしまうことがありました。
さらに、記憶力低下による間違いや施錠確認への不安、予期しない出来事が起きた際のパニック、困った場合にも他者へ援助を求められないといった問題も確認されました。

役所などで必要な手続きを一人で適切に行うことにも困難がありました。

病歴・就労状況等申立書では「不支給時から何が変わったか」を明確に「退職した」という一言だけではなく、その原因と生活の変化を整理

再請求時の病歴・就労状況等申立書で特に重要となったのは、令和7年7月の請求時と令和8年4月の再請求時との違いを明確にすることでした。

最初の請求時には就労を継続していました。しかし、その後、症状や体調の悪化によって就労継続が困難となり退職しています。

そして家庭生活では、食事、洗濯、通院、買い物、対人対応、社会的手続きなどについて夫の援助が必要となっていました。

そこで申立書では、単に「症状が悪化した」「退職した」と記載するのではなく、

就労継続が困難になった経過 → 退職 → 在宅生活の増加 → 家事等ができなくなる → 夫による支援が増える → 夫の援助なしでは現在の生活を維持することが難しい

という生活上の変化が分かるよう整理しました。

再請求の結果、障害厚生年金2級に認定

令和8年4月に事後重症請求を行った結果、障害厚生年金2級として認定されました。

日本年金機構では、障害認定日時点では障害等級に該当しなかった場合でも、その後症状が悪化して法令上の障害状態に該当するようになった場合には、事後重症による請求ができるとしています。

今回の事例は、まさに最初の不支給時からその後に状態が悪化し、日常生活に著しい制限が生じたことを改めて確認して請求したケースです。

精神障害の再請求で大切なのは「できる・できない」の背景を見ること

精神障害の障害年金では、診断名だけで等級が決まるわけではありません。

また、就労していることだけを理由として、直ちに日常生活能力が高いと判断するものでもありません。障害認定基準でも、仕事をしている人については、就労しているという事実だけで日常生活能力が向上したと捉えず、仕事内容、就労状況、職場での援助、意思疎通の状況などを確認して判断することとされています。

一方で、実際に通常就労を継続できており、診断書の日常生活能力も軽く評価されていれば、不支給となる可能性があります。

その後、病状が悪化した場合には、以前の診断書や不支給理由だけを見て諦める必要はありません。

重要なのは、**「現在、本人が一人でどこまで生活できるのか」「家族が何をしているから生活が成立しているのか」「その支援がなければどうなるのか」**を具体的に確認することです。

今回の事例では、最初の請求時には通常就労と比較的軽い日常生活能力の評価から不支給となりました。しかし、その後の退職と生活状況の変化、そして夫による日常生活全般への支援を診断書及び病歴・就労状況等申立書に適切に反映させることで、最終的に障害厚生年金2級の認定につながりました。

一度不支給になったからといって、将来も障害年金を受給できないということではありません。

病状や生活状況が変化した場合には、現在の状態を改めて確認し、再請求の可能性を検討することが大切です。

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