独居・一般就労で一度は不支給。再請求で障害厚生年金2級が認められた事例

ご相談者の概要

  • 性別:男性
  • 年齢:50歳代
  • 受給年金:障害厚生年金
  • 受給形態:事後重症請求・2級

今回は、精神疾患により障害年金を請求したものの、最初の請求では「独居していること」「一般企業で就労していること」などが大きく影響し不支給となり、その後、症状の悪化によって退職し、生活支援の実態を具体的に整理したうえで再請求を行い、障害厚生年金2級が認められた事例をご紹介します。

 

精神疾患の障害年金では、単に「一人暮らしをしている」「仕事をしている」という外形的な事実だけを見るのではなく、実際にどの程度自力で生活できているのか、周囲からどのような援助を受けているのか、就労をどのような状態で維持しているのかを丁寧に確認することが重要です。

 

相談時の状況

平成27年9月、最初の障害年金請求は不支給

ご相談者は長年精神症状を抱えながら生活していました。

平成27年9月、症状や日常生活への支障が大きくなったことから、障害厚生年金を請求しました。

当時の診断書を見ると、主治医は日常生活能力についてかなり厳しい評価をしており、「日常生活のほとんど全ての場面で他者の強い助言と見守りが必要」とする趣旨の記載がありました。

また、労働についても、通常の労働能力が十分に保たれているという評価ではなく、限定された環境や業務でなければ継続が困難であることをうかがわせる内容となっていました。

つまり、医学的には2級相当と考えられる状態が診断書に表れていたのです。

しかし、当時、ご本人は独居生活をしており、さらに一般企業で就労していました。

その結果、実際の日常生活能力や労働能力について、「一人で生活できている」「一般就労を継続できている」という点が重く評価され、障害年金は不支給となりました。

診断書上の重い評価と、独居・一般就労という生活実態との間に大きな隔たりがあるように見えてしまったことが、不支給につながった一つの大きな要因と考えられます。

「独居している=一人で生活できている」とは限らない

精神疾患の障害年金では、この点が非常に重要です。

一人暮らしをしている人であっても、本当に何の援助も受けず、自分だけの力で生活を維持しているとは限りません。

例えば、

  • 食事を準備できず、簡単な食品だけで済ませている
  • 部屋の片付けや掃除ができない
  • 入浴や着替えが十分にできない
  • 金銭管理ができず、支払いを忘れる
  • 行政手続きや郵便物の管理ができない
  • 通院や服薬の管理に援助が必要
  • 対人関係を築くことが難しい
  • 困ったことが起きても自分から相談できない

という状態でも、形式上は「独居」となっているケースがあります。

現在の精神障害の等級判定ガイドラインでも、独居の場合には、単に一人暮らしをしているという事実だけではなく、独居となった理由、家族等からの援助、福祉サービスの利用状況、実際に必要としている支援の程度などを確認する考え方が示されています。

したがって、障害年金の請求では「独居」という一言で終わらせず、その生活がどのような援助によって成り立っているのかを具体的に説明する必要があります。

症状が悪化し、一般就労を継続できず退職

最初の不支給決定後も、ご本人は何とか就労を続けていました。

しかし、精神症状や認知面の問題、対人関係上の困難などが続き、徐々に仕事を維持することが難しくなっていきました。

最終的には一般就労を継続することができず、退職することになりました。

令和8年3月の再請求時には就労しておらず、診断書の「現在時の就労状況」についても、就労能力が認められない状態となっています。

さらに主治医は、現在の日常生活能力について、日常生活のほとんど全ての場面で他者の強い助言や見守りが必要であり、労働能力は現状ではないと考えられるとの趣旨で評価していました。

初回請求時よりも、病状と実際の生活・就労状況との関係が明確になっていました。

独居生活を支えていた複数の福祉関係機関

再請求で特に重要となったのが、生活支援の実態を具体的に示したことです。

ご本人は引き続き独居でした。

しかし、その生活は決して「完全に自立した一人暮らし」ではありませんでした。

生活を維持するため、

社会福祉協議会、ホームヘルパー、地域生活支援センターなど、複数の支援機関による援助を受けていました。

支援者からの声掛け、助言、見守り、生活上の相談、各種手続きの支援などがあることで、何とか地域での生活を維持している状態でした。

つまり、

「一人暮らしができている」のではなく、「多くの人の支援を受けながら一人暮らしという形を維持している」

というのが実態でした。

障害年金では、この違いを明確にすることが非常に重要です。

病歴・就労状況等申立書では「支援がなければどうなるか」を具体化

再請求では、診断書だけに頼るのではなく、病歴・就労状況等申立書でも日常生活の実態を丁寧に整理しました。

特に意識したのは、単に、

「ヘルパーを利用している」
「生活支援センターに相談している」

と記載するだけで終わらせないことです。

重要なのは、

誰が、何について、どの程度支援しているのか。さらに、その支援がなければ本人の生活がどのような状態になるのか

まで説明することです。

食事、身辺の清潔保持、金銭管理、買い物、通院・服薬、対人関係、安全保持、行政手続きなどについて、本人だけでは困難なことと支援内容を具体的に整理しました。

また就労についても、「現在は無職」と記載するだけではなく、これまで一般就労をしていたものの、症状によってどのような問題が生じ、最終的に仕事を続けられなくなったのかという経過を記載しました。

診断書と病歴・就労状況等申立書の内容が矛盾せず、現在の生活状況を一つの流れとして説明できるよう整理することが重要なポイントでした。

再請求の結果、障害厚生年金2級に認定

令和8年3月、改めて事後重症による障害厚生年金の請求を行いました。

今回の請求では、

主治医が2級相当と考える重い日常生活能力の制限があること

精神症状により一般就労を継続できず退職していること

独居ではあるものの、社会福祉協議会・ヘルパー・地域生活支援センターなど複数の支援を受けなければ生活を維持することが難しいこと

病歴・就労状況等申立書で、支援の内容と日常生活上の困難を具体的に説明したこと

などを総合的に整理しました。

その結果、障害厚生年金2級として認定されました。

 

一度不支給になっても、状態が変化すれば再請求を検討できます

この事例から分かることは、過去に障害年金が不支給になったからといって、その後も請求できないわけではないということです。

症状が悪化した、仕事を続けられなくなった、家族や福祉サービスの援助が増えたなど、以前の請求時から生活状況が変化している場合には、事後重症による再請求を検討できることがあります。

特に精神疾患では、

「独居だから軽い」
「一般企業で働いているから軽い」

と単純に判断できるものではありません。

現在の等級判定ガイドラインでも、就労していることだけをもって日常生活能力が向上したとは捉えず、仕事内容、職場で受けている援助や配慮、勤務状況などを確認して総合的に判断する考え方が示されています。

障害年金の請求では、表面的な生活形態ではなく、その生活や就労が、本人の力だけで成り立っているのか、それとも周囲の相当な支援によって何とか維持されているのかを正確に伝えることが大切です。

一度不支給となった方でも、現在の症状、就労状況、生活支援の状況を改めて整理することで、再請求の可能性が見えてくる場合があります。

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