精神疾患で初回請求は「独居」を理由に不支給―再請求で障害基礎年金2級が認められた事例

精神疾患による障害年金では、診断書上は重い状態にあるにもかかわらず、「一人暮らしをしている」という事実から、日常生活能力が比較的高いと評価されてしまうことがあります。

今回ご紹介するのは、30歳代の女性が精神疾患により障害基礎年金を請求し、初回請求では不支給となったものの、再請求において「独居生活の実態」と「周囲から受けている支援」を具体的に整理した結果、20歳前傷病による障害基礎年金2級が認定された事例です。

この事例で重要だったのは、「独居している」という外形的な生活形態だけではなく、その独居生活が本人一人の力で成り立っているのか、それとも周囲の継続的な支援によって辛うじて維持されているのかを具体的に示した点でした。

 

相談者

相談者は30歳代の女性です。

精神疾患について20歳前からの受診歴があり、障害基礎年金の対象となる20歳前傷病として請求を行いました。

  • 性別:女性
  • 年齢:30歳代
  • 年金制度:障害基礎年金
  • 初診:20歳前
  • 請求方法:事後重症請求
  • 認定結果:障害基礎年金2級

令和7年1月に一度目の請求を行いましたが不支給となり、その後、生活状況や支援状況を改めて整理したうえで、令和8年3月に再請求しました。

その結果、障害基礎年金2級の受給が認められました。

相談時の状況

令和7年1月の初回請求―医師は2級相当と判断、診断書上は日常生活能力の低下が認められていた

初回請求時、主治医は相談者について障害等級2級相当と考えられる状態を診断していました。

当時の診断書の日常生活能力を見ると、食事、身辺の清潔保持、金銭管理、通院・服薬、安全保持など複数の項目について、本人だけで安定して行えるという評価ではなく、助言や指導を必要とする状態が示されていました。

特に、対人関係や社会生活については、さらに困難度が高い評価となっていました。

また、精神障害による日常生活能力の程度についても「(4)」に相当する状態として評価されています。

「独居」と「就労」という外形的な事実

一方、当時の書類には、相談者が一人暮らしをしていることに加え、体調に波がありながらも仕事を休みつつ出勤していた状況が記載されていました。

診断書には、日常生活能力が低下している一方で、私生活では何とか生活し、仕事についても休みながら出勤していた状況が記載されています。

そのため、

「一人で生活している」
「仕事にも出ている」

という外形的な事実が、本人の実際の日常生活上の困難さよりも強く受け取られてしまった可能性がありました。

結果として、令和7年1月の請求は不支給となりました。

令和8年3月に再請求―障害基礎年金2級認定 再請求では「一人暮らしの中身」を整理

初回請求の結果を踏まえ、再請求では単に「独居している」と記載するのではなく、

「独居ではあるが、本人だけの力で生活が成立しているわけではない」

という点を重点的に整理しました。

相談者には、高校時代の同級生による日常生活上の支援がありました。

さらに、診断書上でも、、知人からも支援を受けている状況が示されました。

再請求時の診断書には、日常生活能力が症状のため極めて低下した状態が続き、自宅ではほとんど無為に過ごし、知人等の援助を受けて生活している旨が記載されています。

こうした生活実態を診断書と病歴・就労状況等申立書の双方から説明した結果、令和8年3月の再請求では、20歳前傷病による障害基礎年金2級が認定されました。

独居でも、実際には支援を受けながら生活していた

「一人で住んでいる」と「一人で生活できる」は異なる

この事例で最も重要だったのが、独居生活の評価です。

住民票上、一人暮らしをしているとしても、

  • 食事を適切に取れているか
  • 身だしなみや清潔を維持できているか
  • 金銭を適切に管理できているか
  • 通院や服薬を継続できているか
  • 対人関係を維持できているか
  • 危険を回避できるか
  • 行政手続きや社会生活を一人で行えるか

という問題は別に考える必要があります。

再請求時の診断書では、食事、清潔保持、金銭管理、通院・服薬、安全への対応などについて、助言や指導がなければ十分に行えない状態が示されていました。

さらに、対人関係や社会性については、助言や指導があっても適切に行うことが困難な状態として評価されていました。

高校の同級生をはじめとした周囲の支援を具体化

「知人の支援」が生活維持に重要な役割を果たしていた

相談者には、高校時代の同級生という身近な支援者がいました。

再請求では、「友人がいる」というだけではなく、本人が一人で安定した日常生活を送れているのではなく、知人からの見守りや援助を受けながら生活していることを明確にしました。

精神疾患では、家族と同居していないために、一見すると自立して生活しているように見えることがあります。

しかし実際には、家族以外の友人・知人が支援者となっているケースも少なくありません。

本事例では、高校の同級生という身近な存在に加え、福祉関係者からの援助も利用しており、複数の支援によって独居生活が維持されている実態を説明しました。

病歴・就労状況等申立書では「独居の実態」を丁寧に説明 診断書だけでは伝わらない生活状況を補足

再請求では、病歴・就労状況等申立書の内容も重要となりました。

20歳前から現在までの病歴を時系列で整理するとともに、症状の経過だけではなく、

  • 一人暮らしをしていても日常生活能力が低下していること
  • 日常生活の各場面で援助を必要としていること
  • 高校の同級生等の知人から支援を受けていること
  • 支援がなければ現在の生活を維持することが難しいこと

を具体的に整理しました。

特に精神疾患の請求では、「できていること」だけを記載すると、実際よりも軽い状態として伝わることがあります。

重要なのは、**「結果としてできているか」ではなく、「誰の支援によって、どの程度の負担を伴ってできているのか」**という生活の実態です。

 

この事例から分かること―「独居=自立」とは限らない

今回の事例では、初回請求時から主治医は重い日常生活能力の低下を認めていました。

しかし、一人暮らしをしていることなどから、本人の生活能力が実態以上に高く受け取られ、初回請求では不支給となりました。

再請求では、高校の同級生からの日常生活支援、援助を含め、「支援を受けながら辛うじて維持している独居生活」であることを具体的に整理しました。

その結果、20歳前傷病による障害基礎年金2級の認定につながりました。

精神疾患で一人暮らしをしている方の場合、「独居だから障害年金は難しい」と単純に判断するのではなく、

独居生活を実際にどのように維持しているのか、誰からどのような支援を受けているのかを丁寧に確認することが重要です。

同じ「一人暮らし」であっても、完全に自立して生活している場合と、周囲の継続的な援助によって何とか生活が成り立っている場合とでは、その実態は大きく異なります。

本事例は、診断書、病歴・就労状況等申立書、支援状況を相互に整合させ、「独居という形式」ではなく「実際の日常生活能力」を具体的に伝えることの重要性が表れた受給事例といえます。

障害年金の認定は、傷病の状態、診断書の内容、日常生活状況、就労状況、支援状況等を個別に確認して行われるため、本事例と同様の事情がある場合でも、必ず同じ結果になるものではありません。

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