障害年金を社労士に依頼するとどうなるか|依頼範囲と選ぶときの基準
社労士に依頼すると、初診日の確認、書類の収集と作成、医師への説明、年金事務所とのやり取りまでを任せられます。依頼したほうがよい状況と、依頼先を選ぶときに確認したい点を整理します。
【この記事でわかること】
・社労士に依頼したときに任せられる業務の範囲
・依頼したほうがよい状況と、自力で進めやすい状況の違い
・依頼先を選ぶときに確認する3つのポイント
・依頼しても受給が保証されない理由
・費用が安い事務所を選ぶことのリスク
監修 磯野 宏(いその ひろし)
磯野経営労務事務所 代表 特定社会保険労務士
東京都杉並区出身。芝浦工業大学卒業後、建設業(トンネル工事等)にて人事・労務・経理を経験。
平成9年9月、広島県三原市にて磯野経営労務事務所を開業。広島県社会保険労務士会にて理事・監事を歴任。
平成19年4月、特定社会保険労務士付記(紛争解決手続き代理者)。
平成20年9月、障害年金相談業務を開始(広島障害年金センター)。現在は「広島・福山障害年金相談室」として、障害年金の裁定請求・不服申立て支援に特化して活動。精神科医師・大学教授・弁護士と連携しながら、精神疾患やパワーハラスメントに起因する案件にも取り組む。
保有資格:第1種衛生管理者、AFP・2級FP技能士、成年後見人
社労士に依頼したときに任せられる範囲
社労士に依頼すると、受給要件の確認から書類の収集と作成、医師への説明、年金事務所への提出と照会対応までを任せられます。
社会保険労務士は、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成とその提出手続の代行を業として行える国家資格者です。障害年金の請求書類の作成と提出代行は、この業務範囲に含まれます。「誰かに頼めるのは分かるが、具体的に何をしてくれるのか」という疑問に答えるために、工程ごとに整理します。
受給資格と初診日の確認
依頼するとまず、受給資格、保険料納付要件、初診日を確認し、請求できる状態かどうかを整理します。
この工程は手続きを進める前提の確認です。保険料の納付要件を満たしていない場合、障害の状態がどれだけ重くても障害年金は受け取れません。初診日が確定しないと請求する年金の種類も決まらないため、この段階で状況を整理しておくことが、後の工程全体の精度を左右します。
年金事務所でも加入記録の確認はできますが、初診日の証明が取れない、カルテが廃棄されているといった状況では、代替資料の組み立て方まで窓口では案内してもらえません。依頼することで、どの資料を使えば立証できるかを判断するところから一緒に進められます。
出典:e-Gov法令検索「社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC0000000089
書類の収集と作成と点検
受診状況等証明書や診断書の手配、病歴・就労状況等申立書の作成、提出前の点検までを代わりに行います。
必要書類のうち、受診状況等証明書と診断書は医療機関に作成を依頼する書類です。様式の選択、作成を依頼するタイミング、受け取ったあとの確認の観点はそれぞれ判断が必要です。申立書は本人が記載する書類ですが、何をどの粒度で書けばよいかを一緒に整理することができます。
提出前の点検では、診断書と申立書の内容が食い違っていないかを確認します。両書類は別々に作成されるため、同じ生活場面について矛盾した記載があっても本人では気づきにくい部分があります。
主治医への説明と同行
診断書の作成にあたり、本人の生活状況を主治医に説明し、必要に応じて受診に同行します。
診断書は医師が作成しますが、日常生活でどのような支障があるかは、受診の短い時間だけでは医師に十分に伝わらないことがあります。「できないこと」ではなく「支援があって成り立っていること」「調子のよい日だけを基準にして説明してしまうこと」が評価のズレを生みやすいポイントです。
当事務所では、受診前に本人の生活状況を場面ごとに整理し、医師に伝えるための情報を準備します。必要に応じて受診への同行も行っています。
提出後の照会対応
提出後に年金事務所から照会があった場合の対応も、依頼の範囲に含めて進めます。
審査の途中で、提出資料に確認事項がある場合に照会が届くことがあります。照会には期限内の回答が必要であり、提出した書類の内容を把握していないと対応に時間がかかります。依頼している場合は、どの書類の何を補足すればよいかの判断から回答の作成まで任せられます。
依頼したほうがよい状況
初診日の証明が取れない、診断書の内容に不安がある、一度不支給になったという状況では、依頼したほうが手続きが前に進みやすくなります。
「自分で進めるか、頼むか」という判断の分かれ目は、「書類の整合を自力で取れるかどうか」にあります。初診の病院に今も通っていて、カルテも残っていて、日常生活の状況を言葉で説明できる場合は自力でも進められます。次の3つの状況に当てはまる場合は、早めに相談することを当事務所ではおすすめしています。
初診日を証明する書類が残っていない
カルテの保存年限を過ぎている、医療機関が廃院しているという場合は、第三者証明などの代替資料を組み立てる作業が必要になります。
医師法第24条に基づき、診療録(カルテ)の保存期間は5年間とされています。初診から時間が経っている場合、受診状況等証明書を取得できないことがあります。この場合、お薬手帳、診察券、当時の医療費領収書、健康保険の給付記録、家族や知人が書く第三者証明などを組み合わせて立証します。
どの資料をどの順で使えば立証が成立するかは、個々の状況によって異なります。「証明書が取れないからもう無理だ」と判断する前に、手元にある資料を整理して相談してください。
出典:厚生労働省「医師法第24条(診療録の記載及び保存)関連資料」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0624-5e.html
日常生活の困りごとを自分で説明しにくい
精神疾患や発達障害では、できていることとできていないことの線引きを本人が説明しにくく、第三者が整理したほうが正確に伝わる場合があります。
精神の障害の審査では、日常生活の状態が認定基準の中心的な判断材料になります。食事の準備、清潔の維持、金銭の管理、外出、コミュニケーションなど、場面ごとに「一人でできる」「支援があればできる」「支援があってもできない」のどのレベルにあるかが評価されます。
本人が「何とかやれている」と感じていても、家族の声かけや付き添いがあって成り立っている部分が説明から抜け落ちると、実際より軽く評価されることがあります。当事務所では、相談の段階で生活の場面ごとに状況を一つずつ確認するため、説明が苦手な方でも必要な情報を整理できます。
出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html
一度不支給や低い等級になっている
すでに不支給や想定より低い等級の決定を受けている場合は、審査請求と額改定による請求のどちらを選ぶかの判断が必要になります。
不支給通知を受け取った場合、次の選択肢は主に2つです。決定に不服がある場合は審査請求(処分があったことを知った日の翌日から3か月以内)、障害の状態が変化した場合は額改定による請求です。どちらを選ぶかは、不支給の理由、現在の障害の状態、初診日の立証状況によって変わります。
当事務所では、審査請求と再審査請求にも対応しています。「一度不支給になったが、あきらめずに相談したい」という方は、まず不支給の理由を一緒に確認することから始めます。
出典:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html
依頼先を選ぶときに確認すること
依頼先は、障害年金を専門に扱っているか、対応できる傷病の範囲、相談方法と対応時間の3点で確認します。
社会保険労務士の業務は、労務管理・人事・社会保険手続きと幅広く、障害年金の請求を継続的に扱っている事務所とそうでない事務所があります。費用だけで選ぶと、対応範囲や専門性が合わないケースがあります。
障害年金を専門に扱っているかを見る
社会保険労務士の業務は労務管理から社会保険手続きまで幅広いため、障害年金の請求を継続的に扱っているかを確認します。
確認するポイントは「継続的に扱っているか」です。過去に数件経験したことがあるというケースと、障害年金の請求を主業務として積み重ねているケースでは、書類の整合の取り方や医師への説明の進め方に差が出ます。
当事務所は、障害年金の裁定請求、審査請求、再審査請求、額改定、更新を扱っています。2008年に広島障害年金センターを開設し(自社沿革情報)、障害年金支援に特化した業務を続けています。
知識をどう更新しているかを見る
当事務所は、全国の障害年金専門社労士が参加する障害年金研修会に参加し、定期的な集中研修とオンライン講義で事例研究を続けています(研修会の具体的な開催スケジュールは主催団体の案内をご確認ください)。
障害認定基準は改定されることがあり、傷病ごとの審査の傾向や認定事例も変化します。継続的に事例研究を行っている事務所かどうかは、最新の基準に沿った書類の整え方ができるかに関係します。
また、当事務所は発達障害の理解を深める取り組みとして、NPO法人日本インクルーシブ教育研究所の活動について学んでいます。広島県が推進するあいサポート運動や、社労士成年後見センター広島の取り組みにも関わり、障害のある方の生活全体を視野に入れた支援を心がけています(いずれも当事務所の活動情報であり、各団体公式の会員・役員情報とは区別してください)。
相談方法を選べるかを見る
通院や体調の都合で来所が難しい場合に備え、自宅近くでの面談、自宅訪問、病院の面談室、電話やオンラインなど相談方法を選べるかを確認します。
障害年金を請求する方の中には、外出が難しい、一人での移動が困難、入院中といった事情がある方も多くいます。相談方法が来所のみに限られていると、その時点で選択肢から外れてしまいます。
当事務所では、自宅付近の喫茶店や会議室での面談、自宅訪問、医療機関の許可が得られる場合は病院内の面談室での相談、電話やオンラインでの相談から状況に合わせて選べます。面談の受付時間や訪問対応の詳細は、公式の相談案内ページをご確認ください。家族が先に状況を伝えてから本人と話す形でも対応しています。
依頼してもうまくいかない場合と報酬の考え方
依頼しても不支給となる場合はあり、専門家に依頼したことが受給を約束するものではありません。
ウェブ上には「受給率○○%」という数値を前面に出した広告が多くあります。ただし、受給決定率の計算方法(不支給案件を受任したかどうか、取り下げ案件の扱いなど)は事務所によって異なり、数値だけを比較することには限界があります。依頼先を選ぶ際は、対応できる業務の範囲と相談の進め方を確認することが実質的な判断基準になります。
受給の可否は提出資料に基づく審査で決まる
受給の可否と等級は障害認定基準に沿って、診断書その他の資料をもとに審査されるため、依頼の有無で結果が決まるわけではありません。
社労士ができるのは、提出する書類の整合を取り、実際の状態が審査側に正確に伝わる形を整えることです。書類の整合が取れていても、障害の状態が認定基準に達していない場合や、納付要件を満たしていない場合は不支給になります。依頼前の相談で受給の見込みを確認することが、双方にとって重要なステップです。
出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html
料金の安さだけで選ぶと範囲が食い違う
料金だけで選ぶと、診断書の手配や医師への説明、不服申立てが対応範囲に入っていないことがあるため、契約前に範囲を確認します。
成果報酬型の場合、「成果報酬のみ」という表記でも実費(診断書作成料の立替など)の扱いが異なることがあります。審査請求や額改定請求が別料金になっているかどうかも、依頼前に確認してください。
当事務所の料金体系は、裁定請求は受給決定時の成果報酬、審査請求・再審査請求は着手金+成果報酬、額改定・更新は成果報酬です。相談時に対応範囲と費用の全体像をお伝えした上で依頼の可否を判断していただきます。
よくある質問
社労士への依頼についてよく寄せられる質問をまとめました。
社労士に頼むと受給できる可能性は上がりますか
確実に上がるとは言えませんが、初診日の立証資料や生活状況や就労状況の整理が不十分なまま提出される事態は避けられます。
受給の可否は提出資料の内容で決まります。書類の整合が取れていない、認定基準で評価される情報が不足しているといった理由で不支給になるケースは、依頼することで防げる可能性があります。ただし、障害の状態や納付要件が要件に達していない場合は、書類の精度にかかわらず不支給になります。
出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html
依頼するタイミングはいつがよいですか
診断書を医師に依頼する前の段階が最も相談の効果が出やすく、提出後や決定後でも相談できます。
診断書の内容は、依頼前に本人の生活状況を医師に伝えられるかどうかで変わります。診断書を受け取ってから相談する場合でも、記載内容と申立書(日常生活+就労状況)の整合を確認することはできます。不支給通知を受け取った後でも、審査請求の検討から相談できます。着手のタイミングは早いほど選択肢が広がります。
途中まで自分で進めた場合でも依頼できますか
途中からの依頼もでき、集めた書類を確認したうえで残りの工程を引き継ぎます。
「自分で進めていたが行き詰まった」「年金事務所に行ったが書類の整合が取れるか不安になった」という段階からでも相談できます。特に、「病歴・就労状況等申立書」の作成で悩んでいる方が多いです。これまでに集めた書類を確認し、追加で必要なものや修正が必要な点を整理するところから始めます。
相談だけして依頼しないこともできますか
相談だけで終えることもでき、当事務所では相談方法と時間を体調に合わせて調整しています。
「まず状況を聞いてもらいたい」「依頼するかどうかはまだ決めていない」という段階での相談も受け付けています。相談で状況を整理したうえで、自力で進めるか依頼するかを判断していただいて構いません。相談は電話・メール・オンライン・面談から方法を選べます。
まとめ|社労士への依頼は「書類の整合を任せる」という選択
社労士への依頼では、初診日の確認から書類作成、医師への説明、提出後の対応までを任せられますが、受給の可否は提出資料に基づく審査で決まります。
依頼するかどうかを判断するうえで確認したいのは次の3点です。初診日の証明が自力で取れるか、日常生活の状況を自分の言葉で整理できるか、診断書と病歴就労状況等申立書の整合を提出前に自分で確認できるできるか。この3点に自信がある場合は自力でも進められます。不安がある部分があれば、その段階で相談することで次のステップが明確になります。
当事務所(広島・福山障害年金相談室)では、自宅近くでの面談、自宅訪問、病院の面談室、電話・オンラインの4つの方法から体調に合わせて選べます。相談だけで終えることもできますので、まずは現在の状況をお聞かせください。
磯野経営労務事務所 お問い合わせ
https://hiroshima-nenkin.com/contact/
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