家族と同居・休職中で不支給となった後、再請求で障害基礎年金2級を受給できた事例

ご相談者の概要

性別:男性
年齢:40歳
傷病名:うつ病
受給年金:障害基礎年金
受給形態:事後重症請求
認定結果:障害基礎年金2級

今回ご紹介するのは、うつ病で長期間治療を続けていた男性が、令和2年9月に障害年金を請求したものの不支給となり、その後、症状の悪化や就労状況、家族から受けている日常生活上の支援を改めて整理して再請求を行い、障害基礎年金2級を受給できた事例です。

初回請求時にも、診断書上は日常生活に相当程度の制限が認められていました。

しかし、当時は家族と生活し、仕事についても「退職」ではなく「休職中」という状況でした。

その後も治療を継続しながら就労を試みましたが、短時間のアルバイト、在宅作業、B型就労支援事業所での作業など、いずれも安定して継続することができませんでした。

再請求では、単に「働いていない」という結果だけではなく、なぜ就労を継続できなかったのか、そして日常生活が家族のどのような援助によって維持されているのかを具体的に整理しました。

1.令和2年9月の初回請求では不支給

診断書では日常生活に相当な制限が認められていた

初回請求時の診断書Aでは、日常生活能力について、食事、身辺の清潔保持、金銭管理・買い物、通院・服薬、対人関係、安全保持、社会性など、多くの項目について援助や助言が必要な状態と評価されていました。

「日常生活能力の程度」についても、精神障害を認め、家庭内での日常生活はできるものの、時に応じて援助が必要である状態に該当する評価となっていました。

さらに、診断書には、

食事や入浴等最低限身の回りのことはできているが、外出時の不安感が強く、単独での外出は殆どできていない

という趣旨の記載があり、行政手続きや家計管理についても妻が援助している状況が示されていました。 診断書A,B

令和2年7月から休職

就労については、中古CD・レコード販売に関係する仕事に従事し、CDやレコードのクリーニング、データ入力などを行っていました。

しかし、症状のため就労継続が困難となり、令和2年7月から休職していました。

診断書には、治療抵抗性が強く、継続して就労することへの回復は困難な状態が続いているとの予後も記載されていました。

それでも初回請求では、障害基礎年金2級には認定されず、不支給となりました。

この時点では「就労できないため退職した」という状態ではなく、あくまでも在籍したまま休職している状態であったことも、障害状態を判断するうえで考慮されたものと考えられます。

2.初回不支給後も症状が続き、就労を試みても長続きしなかった

起床困難・悪夢・倦怠感・抑うつ状態が継続

その後も治療を継続しましたが、症状は安定しませんでした。

令和3年以降も、

  • 朝起きることが非常につらい
  • 悪夢を繰り返す
  • 強い倦怠感がある
  • 抑うつ状態が続く
  • ほとんど何もできない日がある

といった状態が続いていました。

病歴・就労状況等申立書にも、悪夢の余韻が怖く、ほぼ何もできない日や、食事を何とか摂る程度の日があったことが記載されています。 続紙病歴・就労状況等申立書

3.短時間のアルバイトにも挑戦したが退職

令和5年4月には、リサイクルショップでアルバイトを始めました。

勤務時間は16時から20時まで、週3日程度でした。

一般的なフルタイム勤務ではなく、勤務時間・勤務日数を抑えた就労でしたが、それでも体調が悪い日は休まざるを得ませんでした。

強い緊張を抱えながら何とか勤務していましたが、体調不良のため、同年6月には退職しました。 続紙病歴・就労状況等申立書

この時期の日常生活も安定していたわけではありません。

妻が不在の日には一人で外出することが困難で、自宅で過ごすことが多く、買い物や外出は妻と一緒のときに行っていました。

友人も遠方に住んでいたため、電車を利用して会いに行くことができず、ほとんど会えない状態でした。 続紙病歴・就労状況等申立書

4.在宅就労でも安定した勤務は困難だった

令和6年4月からは、自宅でできるCD検品作業を業務委託で始めました。

在宅勤務であれば一般の職場より負担が少ないとも考えられますが、それでも安定して作業できたわけではありませんでした。

実際には、体調の良い日に限って作業できる程度で、作業量や作業時間にも大きな制限がありました。 続紙病歴・就労状況等申立書

つまり、「在宅で仕事をしていた」という事実だけを見るのではなく、

いつでも決められた時間に働ける状態ではなかったこと

が重要でした。

5.B型就労支援事業所も継続できず退所

令和6年5月後半からは、B型就労支援事業所にも通所しました。

作業内容は主に草むしりで、1日2~4時間程度でした。

しかし、毎日安定して通所できたわけではなく、作業ができそうな日に、強い緊張を感じながら行っている状態でした。

体調の悪い日は、自宅で横になって休んでいました。

その後、体調がさらに不安定となり、令和6年12月23日にはB型就労支援事業所も退所しています。 続紙病歴・就労状況等申立書

6.令和7年には就労を継続できない状態に

令和6年末には実家へ戻りました。

令和7年1月からも精神科で治療を継続しましたが、起床困難、強い倦怠感、悪夢、抑うつ状態などが続きました。

抑うつ症状が強いと、

数日間ほとんど動くことができず、身の回りのことも最低限しかできない日

がありました。

在宅で行っていたCD検品作業についても体調の良い日に限って行っていましたが、令和7年2月には体調不良のため継続できなくなりました。

その後も体調は安定せず、就労することができない状態が続き、日常生活については同居している母・兄から全面的な支援を受けるようになりました。 続紙病歴・就労状況等申立書

7.再請求では「家族と同居」の中身を具体的に整理

家族がいるから生活できるのではなく、家族の支援によって生活が維持されていた

再請求で特に重視したのが、家族から受けている日常生活上の援助を具体的に説明することでした。

「母・兄と同居している」という事実だけでは、本人がどの程度自立して生活できているのか分かりません。

そこで、

家族が具体的に何をしているのか

を整理しました。

食事は母親が準備

著しい意欲低下があり、本人だけでは栄養を考えて食材を購入し、調理し、盛り付け、後片付けまで一連の行動を行うことが困難でした。

そのため、基本的に母親が食事を準備していました。

昼食は前日の残り物やカップ麺で済ませたり、しんどいときには食べないこともありました。

抑うつ症状がひどい時には、食事そのものができないこともありました。これを使う新規作成ヒヤリング ー

洗濯・掃除・整理整頓も困難

洗濯は母親が行っていました。

本人は一日中パジャマで過ごすことも多く、自室の整理整頓や掃除をする意欲も起こらず、寝床も片付けないままの状態になっていました。これを使う新規作成ヒヤリング ー

買い物・金銭管理にも援助が必要

日用品を含む買い物についても母親が行っていました。

本人だけでは必要な物を判断したり、計画的に買い物をしたりすることが困難でした。

また、計画的な金銭管理もできず、趣味や自分の好きなことにお金を使ってしまう傾向もありました。

抑うつ状態が強いときには、そもそも必要な買い物のために外出すること自体が困難でした。これを使う新規作成ヒヤリング ー

通院にも母親の支援

体調の悪い日の通院には、母親の付き添いや車の運転が必要でした。

また、診察時に自分の症状を医師へ十分に説明することが難しく、家族の助言を必要としていました。これを使う新規作成ヒヤリング ー

役所での各種手続きについても、一人では対応が困難で、家族の援助を必要とすることが多い状態でした。これを使う新規作成ヒヤリング ー

8.初回診断書Aと再請求時の診断書Bの違い

初回請求時の診断書Aでは、日常生活能力の程度は**(3)**でした。

これに対して、再請求時の診断書Bでは、金銭管理・買い物、対人関係、安全保持、社会性など複数の項目で、

「助言や指導をしてもできない、若しくは行わない」

という、より重い評価となっていました。

そして日常生活能力の程度についても**(4)**が選択されました。

診断書Bでは、家族から生活全般にわたる支援を受けている状況についても記載されており、初回請求時より日常生活上の制限が明確になっていました。 診断書A,B

9.令和8年1月に再請求し、障害基礎年金2級を受給

令和8年1月、事後重症による障害基礎年金の再請求を行いました。

今回の請求では、

① 初回請求後も精神症状が継続していたこと

② 短時間アルバイトを試みたが退職したこと

③ 在宅勤務であっても安定して仕事を継続できなかったこと

④ B型就労支援事業所も継続できず退所したこと

⑤ 最終的には就労そのものが困難になったこと

⑥ 母・兄から日常生活全般について具体的な支援を受けていたこと

を診断書、病歴・就労状況等申立書、日常生活に関する申立書によって整理しました。

その結果、障害基礎年金2級として認定されました。

10.この事例から分かる障害年金請求のポイント

精神疾患による障害年金では、「家族と同居している」「休職している」「在宅で仕事をしている」といった表面的な事実だけで日常生活能力や就労能力が判断できるわけではありません。

重要なのは、その生活や就労が、実際にはどのような状態で成り立っているのかを具体的に示すことです。

今回の事例では、

「家族と生活している」のではなく、「家族の支援があるから生活を維持できている」

という実態がありました。

また、就労についても、単に「仕事をしたことがある」というだけではなく、

短時間勤務 → 退職 → 在宅作業 → B型就労支援 → 退所 → 就労困難

という経過を時系列で整理することで、病気による就労上の制限をより具体的に示すことができました。

初回請求で不支給となった場合でも、その後に症状や日常生活、就労状況が変化している場合には、現在の状態を改めて確認し、再請求を検討することが重要です。

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